2008.6.27(金)

 今日一日のうちで発した言葉が、「普通で。」(ラーメン屋で大盛りか普通盛りかを訊かれて)だけだったことに驚く。問題は、僕がそのような状況に対して苦痛を感じないところにあると思う。

 一日に喋る言葉の総量は個人によって大きく差があるのだと思う。塾講師のアルバイト先で教えているオタク系女子高生のTちゃんは授業後に、学校や家庭での面白い(と思っている)話(実際にはあまり面白くない)を20分くらい延々と喋ってから帰っていく。彼女はたぶん家でそれ以上に喋っているのだろう。僕の「普通で。」とは随分な違いだ。

 エネルギーの総量は保存されるように、言葉に関しても何らかの保存量があって良い筈である。ひょっとして、一生分の時間で積分したら(理系っぽくてすみません)言葉の総量は一定なのかもしれない。だとしたら、10年後の自分はやたらとおしゃべりな人間になっていたりするのだろうか。そういえば、10年前の自分はもう少し快活な人間だったような。


2008.6.26(木)

 Daily Portal Zの記事を執筆している林雄司さんのページが面白く、過去5年分くらいのコラムをぶっ通しで読んでしまって全く研究が捗らない。穂村弘さんとか長嶋有さんとか、僕はこういう人に弱い。まずい、影響されてしまいそうだ。


2008.6.23(月)

なんだか更新が滞ってしまってすみません。便りがないのは良い便り。わりと愉快にやっております。

曲もぼちぼちと作っております。遅くとも年内には公開の予定です。無謀にも、ピアノソロの曲を作っているところです。


2008.6.6(金)

最近思いついた曲の題名とその構想をいくつか。

・「2億4千万のグノシェンヌ」
グノシェンヌが第1番から第2億4千万番まで続くという、かなり壮大な曲。サティの「6つのグノシェンヌ」を基調にしつつも、旋律的主題として「♪おーくせんまん、おーくせんまん!」のメロディーが使われる。サティの曲はどことなく東洋的であり、それはつまりエキゾチック・ジャパンということだから、意外と合うかもしれない。少なく見積もっても、完成までに50年はかかるに違いない。

・「Menuet discotheque(ディスコ風のメヌエット)」
これは比較的まともな感じかも。ラヴェルの「Menuet antique(古風なメヌエット)」に着想を得たものである。4つ打ちのバスドラムなどを利用してディスコ調にアレンジした、メヌエット形式の曲。元ネタである「古風なメヌエット」の旋律やコード感を随所にちりばめると面白いかもしれない。しかし、僕はディスコ音楽というものをよく知らないし、ましてメヌエット形式なんて全然分からないので、作ろうにも作りようがない。

…もう少しましなことを考えたいのだけど、こんなことしか頭に浮かばない。 


2008.6.3(火)

 中身よりも表層が大事、というのは現代の日本でよく見られる傾向のひとつだと思う。ほとんど同じ内容の商品が複数あった時に、商品の名前やパッケージのデザインで売れ行きが大きく異なった、というのはわりとよく聞く話である。あるいは、「あの人はイケメンである」、「あの子は美人だ」などの巷で交わされる会話も、外見を重視することによって発せられるものなのだと思う(これは今に限ったことではないのかもしれないけど)。

 そのような傾向が良いのか悪いのか、僕にはよく分からない。しかし少なくとも、我々はそのような状況に置かれている、という認識をもつことは大切だと思う。

 僕はわりと何かの名前を考えるのが好きで、例えば電車で目的地に向かう間などの手持ちぶさたな時間に、架空のバンドの名前や曲の題名などをあれこれと考えてしまうことがある。あまり実のある行為とは言えないが、僕自身があまり実のある人間とは言えないのだから仕方がない。思えば高校生の頃からそのような事をやっていたような気がする。その頃から既に実がなかったのである。しかし石の上にも3年、僕はそのような中から、良い名前の付け方についていくつかポイントを見つけたように思う。それらを以下にご紹介したい。

名前をつける際に重要なのは、次の3つであると考えられる:
1.意味
2.言葉の響き(語感)
3.字面

 これは例を挙げて説明したほうが分かりやすいと思うので、世界的に成功したバンドである"The Beatles"を例に取って考えたい。ビートルズがあれほどの人気を得たのは、曲の良さ、メンバーのカリスマ性などの他に、バンド名の良さがあったからではないかと僕は考えている。

1.意味
当然のことだけど、名前には何らかの意味があるはずである。
よく知られているように、"Beatles"という言葉は、"beetle"と"beat"を組み合わせた造語である。名前を付ける場合、1つの名前で2つ以上の意味を持たせるのは定石と言っても良く、ビートルズもその定石を踏んでいる。
他のダブル・ミーニングのパターンとして、「他作品からの引用」というものがある。例えば「ローリング・ストーンズ」というバンド名は、マディ・ウォーターズの"Rollin' Stone"という曲に由来するものだという。つまり、「ローリング・ストーンズ」という名前には、文字通りの「転がる石」という意味に加えて、「マディ・ウォーターズとかに影響受けたっす」という意味が発生しているのである。

2.言葉の響き(語感)
口に出した時に心地よさを感じるかどうかも大切である。
「ビートルズ」という言葉は、一回聞いただけで覚えることができ、しかも何回言っても飽きない、と思う。作家の中村航さんの表現を借りれば、「キャッチーでスマッシュな名前」という感じだ。ビートルズから話は逸れるけど、「エビちゃん」というのも語感としてはかなり秀逸だと思う。エビちゃんがあれほどの人気を誇る(誇った)理由のひとつに、その名前の響きの良さがあると踏んでいるのだけど、どうだろう。

3.字面
文字に起こした時の、文字全体のデザイン性というのも大切である。
"Beatles"の場合、まず最初に大きく"B"という文字が来る。次の"e","a"の2文字は小さく控え目に位置し、バランスを取っている。その次の"t"では、前の"e","a"と比べてやや縦長になり、次に来る文字が"h","k","l"などの縦長な文字であることを予感させる。そして、その予感を裏切らない"l"の登場によって、見る者に予定調和な安心感を与える(ここが山場)。最後に"e","s"の小さめな2文字によって、全体にまとまりをもたらして大団円を迎える。
…というのが僕の"Beatles"という単語に対する印象なのだけど、分かっていただけるだろうか。大事なのは文字の大きさや長さのバランスである。例えばこれが"Beauaes"であったら(そんな単語ないけど)、全体のバランスは台無しだと思う。


 以上見てきたように、名前はいくつかの条件を満たしてこそ、良いものになり得るのだと思う。もっとも、どんなに優れた名前を付けても、中身がなければどうしようもないのだけど。