2008.9.24(水)

 久しぶりにスーパーの話題を。

 スーパーマーケットの精肉コーナーに並ぶ肉のパッケージには、「この鶏肉は山田さん夫婦が育てた鶏によるものです云々」などの文言とともに、山田さん夫婦と思しき素朴な男女の写真が貼られているようなことがよくある。あれがよく分からない。「作った人の顔が分かるから安心」ということなのかもしれないけど、我々は山田さん夫婦について、顔の他に何も知らないのだから全く安心できない。山田さん夫婦は写真を見ると純朴そうな雰囲気を醸し出しているけれど、実はとんでもない悪道者で、裏では鶏に変な薬を飲ませていたり、子供に暴力を振るって日頃の鬱憤を晴らしていたりするのかもしれない。

 山田さん夫婦についての情報をもっと書くべきだと思う。二人はどこで知り合ったのか恋愛結婚なのか見合結婚なのか配偶者に対してどのような感想をもっているのか子供はいるのかいるとしたら何人で現在は何をしているのか子供に対してどのような感想をもっているのか養鶏業を選んだきっかけは何なのか自分の仕事に対してどのような感想をもっているのか延いては自分の人生に対してどのような感想をもっているのか。そのくらい書いてあって初めて山田さん夫婦の人となりが分かる気がする。

 外国産の畜肉にはこうした写真や文章が載せられていないのも不思議だ。国産に対抗して、「この豚肉は中国は四川省の孫さん夫婦が育てた豚によるものです。孫さんはこの豚を最後まであまり好きになれませんでした」とか、「この鶏はメキシコ在住のサバタさん夫妻が育てました。サバタさん(妻)は、夫が8年前に働いた不貞を今も根強く憶えています」などと書いてあったら、スーパーでの買い物がより楽しくなると思う。


2008.9.22(月)

 ドラクエVのラインハットの関所には、川のほとりに佇む一人の老人がいて、話しかけるとこう答える、「ほっといてくだされ。わしは川の流れを見ながらこの国の行く末を案じているだけじゃて…」 この老人は特に話の大筋に絡むわけではなく、むしろいなくても支障ないくらいなのだけど、どういうわけか僕の記憶に強く残っている。

 東京の、僕が住んでいる地域には、中原街道や環七通りなどの大きな道路がいくつかあり、そうした道路に沿って交番が立っていることが多い。交番の前にはいつも警察官がいて、見張りのようなことをしているのだけど、僕はあの警察官を見るとよくラインハットの老人のことを思い出す。コンクリートで出来た川の流れを見ながら、この国の行く末を案じているのかと思う。あの人、いまに悟りを開いて賢者にでもなるんじゃないか(ラインハットの老人は別に賢者になったりしないけど)。

 簡単に言うと、あの警察官って暇そうでいいなということです。僕もあまり人のことを言えませんが。


2008.9.12(金)

 ネットサーフィンという言葉はちょっと大袈裟なのではないだろうか。サーフィンというとダイナミックな印象があるけど、ネットサーフィンでしていることはマウスをかちかちしたりキーボードで文字列を打ち込んだりと、全体的にちまちましている印象は否めない。

 「サーフィンの醍醐味は波を通じて地球と一体になる感覚を味わえることです」とサーフィンをやっている人が話していた。ネットサーフィンの場合はどうか。「ネットサーフィンの醍醐味はネットを通じて世界と一体になる感覚を味わえることです」か。…いや、そうかもしれないけど、していることはマウスをかちかちだ。それなのに世界と一体どうのこうのと言って良いものか。

 ネットサーフィンを頻繁に行う人はネットサーファーと呼ばれるのだろうか。なんかとても恰好良い気がする。ネット界を縦横無尽に行き来するサーファー、それがネットサーファー。僕も研究の合間等にネットサーフィンをしてしまうので、ネットサーファーと自称しても良いのだと思う。「ご身分は?」と誰かに訊かれた時に、「まあ、ネットサーファーですけど」と答えてもあながち嘘にはならない。言った者勝ちだ。学生、塾講師、スーパーの店員、ネットサーファー… 僕がいま持っている身分の中で「ネットサーファー」は一番輝いている。


2008.9.1(月)

 先日(と言っても2週間ほど前)、旅行のようなものに行ってきた。旅行中に考えたことをいくつか。旅行とはほとんど関係ありませんが。

・東京都の大田区は大森区と蒲田区が合併して作られたものだという。大森の「大」と蒲田の「田」から1文字ずつ取った名前ということだけど、インパクトのないほうを選ぶなよ、と思う。「蒲」と「田」だったらどう見ても「蒲」のほうがインパクトがあるはずだし、大森にしたって「森」のほうが強いと思う(そもそも「大」は単に「森」に掛かる形容詞ではないか)。「森蒲区にしよう」とか言う人はいなかったのだろうか。「モリカマク」って何かすごくいい響きだと思うのだけど。

・お盆にはそれに付随するイベントとして「盆踊り」がある。これに倣って他の行事にも踊りをすることにしたらどうだろうか。例えば今月の敬老の日には「敬老踊り」が行われる。体育の日には「体育踊り」、クリスマスには「クリスマス踊り」、バレンタイン・デーには「バレンタイン踊り」…。外国から見たら「あいつら日本人はいつも阿呆のように踊ってばかりだよ。相手にするのも馬鹿馬鹿しい」と思われて、戦争への抑止力になるかもしれない。ならないか。

・夏の甲子園全国高校野球ではよくX JAPANの「紅」という曲をアレンジしたものがブラスバンドで演奏されているような気がするけど、あの曲は高校野球が持っている「青春・爽やか・光る汗」みたいなイメージと掛け離れているのではないか。だって「紅に染まったこの俺を慰める奴はもういない」んだぜ。

 そんなことを考えていた3日間でした。ピース。